俺言魂(おれごんだましい):平田孝 スポーツ教育者

心と体を鍛え
地球上どこへ行っても
胸を張って生きられる
知的な野生人になろう

沖縄少年の船

1971年、横浜市の藤が丘という町に住んでいた頃、
イワキノブコさんという女性が訪ねてきた。
少年の船という計画があって、
教育者として参加してほしい、参加者の募集にも協力してほしい
という話だった。

少年の船は、貸切客船を教場として
少年を船上教育しながらアジア諸国を訪ねるという。
始めは沖縄に行きたい。
激戦上陸の砂浜で、戦没者の慰霊のため“うみ行かば”をみんなで歌う。
その後、姫ゆりの塔など激戦の跡地を訪ねあるくという。

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写真素材 足成:客船


話し合いはかなり長い間、たぶん数時間にわたったと思う。
もっと長かったような気もする。

海上で650人の安全保障は無いという。
そんな彼女の説明を聞きながら、それでいいのかと自問自答。

 (Web担当より補足)
 海上どころか、沖縄だって安全とはいえない時期だった。
 沖縄はまだ米国占領下だった。本土復帰はその翌年、1972年だ。
 そして前年には沖縄でコザ騒動という暴動が起きていた。
 沖縄では米兵の犯罪が横行していた。
 しかし米軍の裁判で、いくつもの事件がうやむやになるなど、
 沖縄の人々は不平等な立場だった。
 米兵が酒酔い運転で沖縄人の女性を轢き殺した。
 これで沖縄の人々は我慢の限界に達した。
 3か月後、別の米兵が沖縄人を車ではねた。
 それがきっかけで、沖縄の一部の人々が暴徒化した。
 これがコザ騒動であった。

彼女は「保安のためにも、何としても私に同行してもらいたい」といった。
私は イワキノブコの熱意にほだされ、同行を決めた。

知人たちのこどもにも声を掛けた。数人の参加があった。
しかし安全保証の無い旅である。
万が一の時の時は責任者としてけじめをつけなくてはいけない。
そこで決心した。私の責任は娘の紀子と参加すること。
ここまでの決心は、団長イワキノブコさんも知らなかった。
彼女が知ったのは後からだ。
だから、私と娘の親子の乗船は誰も知らなかった。

人生意気に感ず。井脇ノブ子の熱意に! だ。
こうして少年の船沖縄に長女を連れて参加した。
女房は怒ったね。「紀子をあなたの活動の犠牲にするんですか」と。

多くの父母に見送るられ東京芝浦を出港した。
父母たちは皆、先ずはわが子の無事を願った。

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写真素材 足成:海と空と島


洋上教室などの活動は順調だった。
しかし太平洋の海原に出てから、夜間に突然高波発生した。
船が前後にゆれる。その内に左右のゆれもだんだん激しくなる。

子供達がさわぎだした。嘔吐者が出始めたからだ。
吐くための容器がない。急いで食堂から借りた。
その数が次第に多くなる。

なぜだろうと観察すると、
どうも他人の嘔吐姿を見ている生徒が多かった。
嘔吐を見ていた者までが容器をかりて自分も嘔吐!
次から次へと 嘔吐の連鎖ががはじまって、
リーダーの大学生まで吐き始めた。

世話する立場の大学生が助けられている。
これには呆れた。
「嘔吐は病気にあらず 命に別状なし」と
学生リーダーに喝!
大げさにさせると 群集心理で混乱さらに混乱する。
各々が互いに氣を沈めるようにと指導した。

その内に海がもっと荒れ始めた。
船の揺れがますます激しくなり、
自動販売機や食堂のテーブル、イスなど、
固定していない物すべてが動き始めた。

大きく右の傾くと、大きなモノも小さなモノも滑るように右へ行く。
今度は反対側に傾いて、また一勢にすべって、壁に当たって大音響。
左へ滑り、右にぶつかりの連続が、高波の静まるまで続いた。

面倒は汚物の処理捨て場だ。これは「水洗だ」と大海原へ投棄。
やっとのことで沖縄の埠頭に接岸し、
船を宿にして「沖縄に学ぶ」の教習が始まった。


私は長い間 現場で教育活動をしてきた。
人を預かる責任は重い。だから「先生」には時に決心が肝要だ! 
嵐の海で、私は魂に誓った。「娘は必ず守る!」
それは「参加者みんなが無事なら娘も無事だ」という意味だ。
いろいろあったけれど、沖縄少年の船は大成功だつた

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写真素材 足成:沖縄の夕日


奢る平家は久しからず。
元衆議院議員いわきノブ子さん
ホームページは見つかったけれど、更新が止まったままだ。
今はどうしているんだい?
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