俺言魂(おれごんだましい):平田孝 スポーツ教育者

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沼津大空襲

東京大空襲で命拾いした。そして沼津に戻れば、今度は沼津大空襲である。第2の命拾いだった。

沼津に引っ越してからも、時々、B29がはるか上空を飛んでいた。それを沼津の連隊の高射砲が迎撃する。しかしB29の高度は10,000メートル。高射砲の到達距離は2,000メートルそこそこ。そんな能力では駄目だ。結局、沼津市にB29の爆撃があった。1945年7月17日のことだった。沼津は駿河湾を控えて、連隊本部や高射砲陣地など軍事施設があったので、それが爆撃の目標だった。しかし結局は沼津全体が爆撃された。

この日も私は運悪く空爆被災地の中を逃げる事になった。最後にたどり着いた所が沼津競馬場だった。広々とした馬場に数十頭の馬が放たれていた。実は厩舎や納屋が空爆で破壊消失し、馬の管理人なども被災して処分を検討中との情報。そこで600円で1頭買い、親父と共に馬をひいて歩いて韮山の家に帰った。家まで8時間ぐらい掛かった。

B29の爆撃のなか、逃げて逃げて命拾いの末、競馬馬が手に入るとは。この時ばかりは愉快な気持ちになった。歩ける、走れる。そして助かった。
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