【映画】RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ
主人公は富山地方鉄道の運転士。実直に職務をこなし、同僚からの信頼も厚い。そんな彼もとうとう定年を迎える。その日がきたら、自分を支えてくれた妻とのんびり余生を過ごそう。まずは旅行にでも行こうか……。そんな彼なりの優しさは、妻の「看護師として働きたい」の言葉で打ち消されてしまう。自分の生き方を取り戻そうとする妻。それを「家計のために新たな苦労を……」と思ってしまう夫。二人の心はすれ違っていく……。
前作は一畑電鉄。今回は富山地方鉄道が舞台です。前作は鉄道に転職する男の物語でしたから、鉄道も準主役級の扱いでした。しかし今回はちょっと趣が違います。鉄道のシーンは主人公の職場としてたくさん出てきます。ふだん見られない情景もたっぷり。でも、物語は夫婦とその周辺で進みます。
主人公の年齢設定からして、今回の観客ターゲットは『大人の休日倶楽部』の層です。前作は40代でテーマが転職でしたから、私にとって身近でした。でも、今回は未婚の人には実感がないなあ……と、前半までは思っていました。それが、いよいよ定年が近づくという状況になって、「仕事とは何か」「家族とは何か」というテーマを投げかけてきます。
いわゆる熟年離婚のテーマを扱ったドラマや映画はいくつか見ましたけど、本作では「えっ、この展開は新しいな」と思わせつつ得心に至ります。
鉄道は脇役とはいえ、いいシーンがいっぱいあります。夜の車庫に主人公が佇む場面。引退列車の運行シーンは泣けます。でも、悲壮感だけではなくて、中川家礼二さんの運転士など、コミカルな味付けもあり、それがちゃんと伏線になっていました。市内線、富山ライトレール、黒部峡谷鉄道も登場します。あ、なんと、一畑電鉄も意外な形で出演しています。ストーリーに触らない範囲で、さり気なく前作を見た人をくすぐってくれます。
ネタバレというわけでもないですが、ひとつ補足を。本編だけではわかりにくかったんですが、米倉斉加年さんの役は三浦友和さん演じる主人公の先輩です。つまり、主人公に仕事を叩き込んだ人です。これを理解してください。そこを理解してこそ笑える場面や、しんみりと心に残る場面がいくつかあります。
さて、次回作はどこなんでしょうねぇ……。楽しみです。
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